日本の冷凍食品工場の待遇が2007年の中国と同等?
最近発生した農薬入り冷凍食品事件。そういえば、昔、同じような農薬混入事件として中国製の毒入り餃子事件というものがありました。
中国側の報道によればこの事件の犯人(臨時雇い)の動機は「賃金待遇や同僚従業員に対して不満を抱き、その腹いせにギョーザに毒物(農薬)を混入させた」らしいです。
しかし理由がどうであれ、日本国内では中国製食品への懸念が一気に高まり、対中感情が悪化するきっかけとなる事件の一つでした。
今回は中国製ではなく日本製ですが、最近逮捕された被疑者の犯行動機もまた待遇への不満ではないかと報道されています。
49歳のこの被疑者は8年勤めても派遣社員のままで、手取りで僅か12万円程度。
これは中国元でいえば7000元程度になります。中国なら3000~4000元が平均的な賃金でしょうから、まだまだ日本の方が高い状況です。
では、なぜ中国では2007年に起こり、日本では今起こったのでしょうか。
賃金が上昇傾向にある中国とは異なり、日本では賃金が年々下落傾向にあって、被疑者の給料も以前より下落していたということです。
将来上がる可能性が高い給料と将来下がる可能性が高い給料では満足度も大きく違うと思いますので、今回の被疑者の給料の実質的な価値は、毒餃子事件が発生した2007年の中国レベルということなのかもしれません。
そもそも物価が違いますし、中国の工場なら勝手に施設を使って生産して横流しできるので副収入も期待できる状況です。中国のC2C販売サイトのタオバオを見れば、横流し品と思われますものが大量に売られていて、労働に対する賃金が見合わなければ無理やりにでも補てんするという発想なのでしょう。
ということで、工員の実質的な給与はすでに日中で逆転しているのかもしれません。その逆転は2007年ではなく最近起こり、この事件もまた最近起こったと言うことなのでしょう。
雇用安定性、同一労働の他者との賃金差、物価水準、賃金上昇率、現在の手取り賃金などのパラメータから算出される給料の実質的価値がある一定水準を割り込むと、閾値の低い(キレやすい)不満分子がこういった事件を起こす確率が大きく高まるのではないでしょうか。
日本製だから安心とか中国製だから危ないというのではなく、どこの国製であれ、低コストで生産された食品はそれなりのリスクが織り込み済で、低価格でモノを買う人はボロ株を買うのと同じで、そのリスクを取っているということを自らが良く認識するべきなのだと思います。