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中国農村の人から見ると、中国の有名大学の学生は優秀じゃない

 

日本では、東大生(有名大生やその出身者)は優秀だと一般的に認識されていますが、その概念は……そのまま中国の有名大学にも当てはまるのでしょうか?

大学名だけで、学生や出身者が優秀であると判断するためには、少なくても次のような前提が必要でしょう。 1.どの学生も、大体同じ条件(同じ難度)で入学していること 学生の学力にバラツキが多いならクオリティコントロール(QC)に問題があり、ブランド価値が下がります。

2.地方と都市で大きな教育格差がないこと 教育格差が大きすぎると、優秀な人間を拾う事が出来ず、伸びる原石が星の数ほど埋もれることになります。 従って、ライバルが減少し、入試が容易になります。

日本では多少の問題があるものの、1,2とも条件はクリアされていると広く認識されているから「東大生は優秀」といった世間の評価が確立しているのだと思います。

しかし、中国の大学を日本と同じように考えてはいけません。

国が違えば教育制度も異なるわけで、北京大や清華大(中国の代表的有名大学)と聞いて条件反射的に「優秀」と考えてはいけないわけです。 その理由は、前提条件の1、2が共にクリアされておらず、QCに問題があり教育格差も大きいので、大学名の価値が低いと考えられるからです。

前提1に関して 中国の場合は省ごとに最初から入学数が決まっていて、例えば北京大学の場合、2012年だと北京市には約600名が割り当てられたのに対し、河南省では100、山東省70という数字だそうです。 省人口比でみると、北京:3人/10万人 河南:0.1人/10万人 山東:0.07人/10万人 となり、北京と山東の格差は43倍に達します。このまま日本のように素直に全国統一試験をやってしまうと点数が低い人が合格し高得点の人が不合格なるので都合が悪く、省ごとに別々の試験をやることによって、目くらましをしている状況です。一票の格差ならぬ、一点の格差ですね。 これで同じ大学の学生というのは、日本の考え方だと、かなり無理があり、地方の人から見ればフェアじゃないという事になるはずです。

これは、制度として公式に行われている歪みですが、非公式な部分も含めると歪みはますます広がります。 裏口など月並みのものから、留学生が中国の有名大学に入るのは簡単なので、中国人富裕層がわざわざ外国籍を取得した上で有名大学に入り込む学歴ロンダリングまで生まれています。 北京大に留学した日本人の学歴も、スゴイとは思わない方がいいかもしれません。

前提2に関して CNNによると、上海では高卒者の大学進学率が84%に上るのに対し、農村部の貧しい家庭から大学に進学するのは5%以下という話があります。 http://www.cnn.co.jp/world/35042895-2.html 都市部の学校は施設も充実していますが、農村部は本当にボロいです。それだけでなく、都市には予備校や塾などの私的な教育環境が多数整備されていますが、地方にはありません。 星の数程の天才・秀才が、都市部以外の中国の大地に消え去っているわけで、せっかく人口が多いのに、それを全く生かさない教育システムになっているわけです。

このように、中国では教育環境の悪い地方の学生に対して高い合格点が求められるという状況になっているため、北京出身の北京大生と地方出身の北京大生は全く違う学力を備えていることになり、これを一括りに北京大生とするには、かなり無理があるということになります。 XX大学だからと評価するのではなく、中国では個々の人間を別々に評価するしかありません。

この話は、日本国内では意外と知られていません。 本社が採用した北京大生より現地法人採用の地方大学生のほうが、優秀なんてことも普通だと思います。

筆者も最初はまったく知りませんでした。

この話を最初に聞いたとき、私が思ったのは、この歪んだ教育制度(凡才が天才・秀才を押しのける)のおかげで、中国の最適化が阻まれ日本が物凄く救われているということです。 もし、中国で日本の様な教育が行われて「星の数程の天才・秀才」がひとたび目覚めてしまえば、恐るべき強国が隣に誕生することになるでしょうから。